それは井深ももちろん同じ気持ちだった。
普段から思慮深く慎重に行動する井深だから、存否確認の必要性を口にしたのだが、
それを叱責されてしまっては、奴自身 立つ瀬がない。
しかも 命を惜しんでの発言と思われてしまっては心外だ。
井深は戸惑う表情を見せて言う。
「俺は命を惜しんで言ったんじゃない。皆がここでともに果てると言うのなら、それでもよいのだ」
井深の言葉に、皆がここで腹を切るという意見がまとまったかに見えた。
しかし。
「……ダメだ!! 俺も井深の意見に賛成だ!!
誰か斥候を差し向けるんだ!!
八十!お前は井深とともに斥候に行け!!」
そう言ったのは、雄治だった。
「―――雄治!? お前、何言って……!?」
突然何を言い出すのだと、驚いてとなりの雄治を見つめる。
雄治は気を失いそうになるのを必死でこらえながら言った。
「俺も……!俺も、城が落ちたとは思えない!!
まだ動ける者は確認に行くべきだ!!
俺や和助はここに置いてゆけ!! 自分の始末くらい自分で出来る!! なあ、和助!?」
「もちろんだ」 と、苦痛の表情の中で和助は笑う。
「ちょっと待て!! お前が残るなら俺も残る!!
約束しただろう!? 俺達はどんな時も一緒だ!!
死ぬ時は刺し違える!そう決めただろう!?」
すると雄治は 残りの力を使い切るような勢いで、俺の胸ぐらを掴み、顔を寄せ小声で言った。
「お前まで死ねば、ゆきはどうなる!?
これから誰があいつを守るんだ!?
俺はお前を生かしたい!!
俺の分まで、ゆきのそばにいてほしいんだ!!
頼む!八十!! 井深とともに斥候に行くと言ってくれ……!!」
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