この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

 




………絶望。




望みは、絶たれた。



まるで 悪い夢でも見ているかのようだ。



一同は落胆のあまり呆然と立ち尽くし、その場に座り込む者もいる。



我々は何のために、疲労や空腹と戦いながら、傷ついた身体を引きずりここまで来たのか。



こらえきれない思いは涙となって溢れ、雄治だけでなく皆の頬を濡らす。



城へ戻ることだけが、唯一の希望だった。

それだけが皆の心の支えだった。



その城が落ちてしまったら、

俺達にはもう 帰る場所がない………。




皆、燃えさかる城下を、ただただ凝視するしかなかった。







「……ゆき……!」



城下を見つめたまま、雄治が小さくつぶやく。
奴の左手は、右腕に巻いた手拭いを強く握りしめていた。


この光景に、急にゆきの安否が心配になったのだろうか。




無理もない。




俺達が戦場へ出てから、わずか一日。

そのたった一日で、城下はおろか城まで炎に包まれているなんて。



今の城下町は、昨日までのそれではない。

こんなに早く、城下への敵の侵入を許してしまうなんて。



いったい……一体誰が、この惨状を予測できただろう。






城下のほうからは、しきりと銃声や砲声が聞こえてくる。



逃げ遅れた町の人々の、悲痛な叫びがここまで届いてきそうだ。





「……大丈夫だ!! ゆきは城に行っていないはずだ!! まつの家に避難したはずだ!! 俺がそう まつに頼んだ!!」



雄治と自分の心を安心させるため、叫ぶ。

それでも雄治はうなだれて地面を見た。涙の粒が数滴落ちる。



「……だが、俺の母上や姉上は、城へ避難したはずだ。もう……生きてはいまい」



隊士達の家族のほとんどは、城へ避難したはずだった。

その者達はきっと、城と運命を共にしただろう。



だが それを口にする者は、誰もいなかった。