洞門を抜け出すと、弁天山西側の中腹に出る。
暗闇から少しでも陽の光りのあたる場所に出られて、俺達はみな頬を緩ませた。
杉林に囲まれた狭い空を見上げると、分厚く覆われていた雲のあいだから、いくつもの光りの帯が深い杉林の中にまで差し込んでいる。
それがとても、きれいだと感じた。
――――希望の光り。
きっと、この場にいた誰もが、そう思ったことだろう。
「八十治、代わろうか?ずっと雄治を支えていて疲れただろう」
仲間が手を差し延べてくれる。
その申し出に、俺は目を細めた。
「疲れてるのは 皆一緒だ。大事ない。ありがとな」
一同は皆、銃や大刀を杖がわりにしてお互いを気遣いながら、城が見下ろせる場所を目指して山道をのぼる。
俺は洞門を振り返った。
そのいつもとなんら変わらぬ姿に、涼を求めて水浴びに来た、あの楽しかった夏の日を思い出す。
いつもここに来ると、必ず誰かしらいて泳いでた。
ふざけあったり、競い合ったり。
そして時にはケンカもしたり。
でもみんな、いつも笑顔だった気がする。
(―――もう あの頃には戻れない)
未練を断ち切るように強く首を振ると、再び歩き出す足に力を込めた。
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