「……兄上はきっと、今の俺の姿にがっかりしておられるだろうな……。
兄上だけじゃない。父上も、母上も。姉上だって。
情けないと、きっと叱るだろうな」
「……ああ!そうかもな!そう思うなら、これから立派な働きを見せればいいじゃないか!
まだ終わった訳じゃない!そうだろう!?
最期の時は、ともに勇ましく散ろうぜ!!」
捨て鉢ともとれる俺の言葉に、雄治がふっと笑いで返す音が、唯一まともに働いている耳に届く。
「それにだ!ゆきに情けない死に様は見せられんぞ!」
俺は雄治を励まし続ける。そうしていないと、不安でたまらなかった。
そんな俺の闇に覆われた視界に、 一筋の希望の光りが差し込んでくる。
「出口だ………!! おい、みんな!洞門を抜けたぞ!!」
先頭をゆく篠田どのの、大きな声が響き渡る。
穴に差し込む温かな光りに、徐々に安堵の表情を浮かべる仲間達の顔がうつしだされる。
雄治も、生気の失われそうな顔をかすかに微笑ませていた。
.

