「……永瀬の父上は、すでに敵に囚われているらしいからな。
今さら捕虜となっても、たいした恥にはならんだろ」
(………!! )
「―――なんだとお!?」
ボソリとつぶやかれたその声に、雄治の瞳に強い怒りの色が浮かびあがる。
俺も腹が煮え返るような気持ちに駆られた。
「誰だあ!? いま言った奴、出てこいっ!! 目の前に来てもういっぺん言ってみろっ!! コソコソ言うなんて卑怯だぞっ!!」
雄治は見回して怒鳴るが、名乗り出る者はいない。
辺りは静まり返った。
雄治の拳が強く握られる。その顔は屈辱で歪んでいた。
「……父上は囚われたかもしれんが、今頃はきっと自害しておられるはずだ!!
そんな恥辱を受けるくらいなら!俺が今ここで腹を切って、父上の汚名を雪いでやる!!」
言うが早いか、雄治が小刀の鞘を払う。
「―――よせ!雄治やめろっ!!」
俺は雄治の腰に抱きつくようにしてこれを止めた。
口にできない想いが、心の中で叫んでた。
――――死ぬな!
俺はどうしても、お前をゆきの元に帰したい!!
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