重い足を引きずりながら、なんとか沓掛峠を越えた金堀部落のところまで行き着いたが、雑木林の中から街道沿いを覗いて見ると、味方の兵はすでに引き上げたらしく、敵兵に占領されていた。



「……ダメだな。こんなに早く敵がまわっていようとは」

「どうする?儀三郎」



頼みの味方も見つからず、行き詰まった隊士達は、がっかりした思いと疲労でその場に座り込んだ。



戦況がまったくわからない。



自分達はこのあとどうすればよいのか、どこに行けば味方に会えるのか、まるでわからなかった。


篠田どのは皆を振り向く。そして気がついて言った。



「……おい、庄田がいないぞ?それに峰治や武治は?誰か知らないか!?」



和助を支えて歩いていたため、ついてゆくのがやっとだった俺は、和助に肩を貸したまま後ろを振り向いた。



たしかに さっきまで一緒にいたはずの、坂井(さかい) 峰治(みねじ)簗瀬(やなせ) 武治(たけじ)庄田(しょうだ) 保鉄(やすかね) がいない。


列の最後あたりにいた石山(いしやま) 虎之助(とらのすけ)どのが、坂井ら三人は途中で敵兵に襲撃され谷底に転げ落ちていったと、目を潤ませ悲痛な声で言った。