十七歳組は集まって、これからのことを相談している。
簗瀬どのが言った。



「とりあえず、山内さまがいない今、誰か指揮をとる者が必要だ。俺は儀三郎がいいと思う」



間瀬どのも頷く。



「俺もそれに賛成だ。儀三郎は嚮導(きょうどう)の一人だし、儀三郎の言葉なら皆も納得するだろう」

「俺もそう思う!なあ、みんな!それで異存はないよな?」



そう言って野村どのが皆を振り向くと、その場にいた全員がいっせいに頷いた。



もちろん異論などあろうはずがない。



篠田(しのだ) 儀三郎(ぎさぶろう)どのは、日新館でも成績優秀で年下の面倒見もよく、《辺》の内外の皆に慕われていた。


また白虎隊が編成された折りも、篠田どのは嚮導という隊士のまとめ役の一人に選ばれていた。


皆に推された篠田どのは黙って話を聞いていたが、閉じていた切れ長の涼やかな目を開けると、一同を見渡した。



「……よし、わかった。皆がそう言ってくれるなら、俺も異存はない。
不肖 篠田、これより隊長に代わり指揮をとる!

とりあえず沓掛峠を越えたところまで戻れば、味方の陣地があるはずだ。我々はそこまで退却する。

負傷している者には誰か手を貸してやってくれ。それでは行こう!」



こうして 俺達は篠田どのを先頭に、敵軍から身を隠すため(やぶ)や雑木林の中を抜けながら、味方の陣を求めて敗走していった。