濃霧と硝煙に包まれて、先が見えない中を俺達は進んでゆく。
視界はひどく悪いが、銃声や砲声はすぐ近くで聞こえている気がした。
いつ敵に出くわすか わからない。
壁のようなこの濃霧から、いきなり敵が現れて襲いかかってくるかもしれない。
そんな緊迫した状況の中を、十六橋に近い戸ノ口原まで前進した。
歩を進めるうちに、少しずつ霧が晴れてくる。
すると街道沿いに、敵の姿を視認できた。
しかも我々白虎隊は、このまま前進すれば敵の側面を攻撃できる絶好の位置にいる。
「……散開!構え!」
山内小隊頭が、声音を落として指示を出す。
隊士達は身をかがめたまま、すばやく散開し銃を構えた。
俺と雄治、そして俊彦もとなり合って銃を構える。
そのまま地を這うようにして射程距離を詰めると、ちょうどいい側溝がありそこに身を隠した。
「――――撃てぇーい!!!」
霧が晴れた一瞬を見計らい発せられた山内小隊頭の指示に、俺達はいっせいに射撃した。
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