「なんだなんだ?何の話?」
俺と雄治の会話を聞きつけて、となりの松にいた悌次郎や井深、それに俊彦までが近寄ってくる。
悌次郎が興味津々で尋ねてきた。
「なあ、誰が誰を待ち続けるって?」
その問いに、俺は隠すことなく答える。
「俺の妹だよ。雄治と恋仲だったんだ」
「ばっ……!八十っ!!」
あわてる雄治をよそに、悌次郎が興奮したように身を乗り出してきた。
「やっぱりなあ!そんな気がしてたんだ!以前 道端で八十治の妹御を見つけた時の、あの雄治の態度!
ケガをして泣いていたのを見たとたん、大慌てしてさあ!あれは ただの知り合いって雰囲気じゃなかったもんな!なあ茂太郎!?」
悌次郎がとなりの井深に同意を求めると、井深もうんうんと頷く。
「そうだな。掟を破ってまでも、何度も声をかけていた」
「こら!余計なこと言うな!悌次郎っ!井深までっ!」
雄治があまりにも声を荒らげて大騒ぎするから、
「おいそこ!騒がしいぞ!静かにしろ!」
と、半隊頭の原田 克吉さまに叱られてしまった。
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