この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

 


雄治もうつむいて膝を抱える。



「……俺も。あれは言い過ぎだったかと、少し後悔している。
けど、あいつが自害するなんて言うから。だからつい 思いつきで言ってしまったんだ」


「思いつき……!?」



俺は驚いて言葉をさらった。
暗闇のなか雄治の横顔を見つめる。


これはなんとまた、呆れたというか何と言うか。

だが……きっとこいつも、一瞬の迷いを振り払い、あえてその思いつきを通したのだろう。



雄治は膝の上に顎をのせ、暗闇の先を見つめる。そうして小声でつぶやいた。



「いつまでも帰ってこない男を待ち続けるのはかわいそうだ……。

遺骸を目の当たりにすれば、あいつも……さすがにあきらめがつくだろう。

そうすれば きっと、新しい幸せを見つけてくれるはずだ」


「……お前、そこまで……?」



(そこまで ゆきのことを考えていたのか?)



つい 目を細める。



「……そうだな。たしかにゆきは、放っておけばいつまでもお前を待ち続けそうだ」



それほどゆきは、お前を必要としてるから。



それも ひとつの手段かもしれない。


死んでゆく俺達の痛みや苦しみはほんのわずかだろうが、
残された者達のそれは、いったいどれほどのものだろうか。



きっと……一生続くに違いない。



だが それでも、生きてゆかなければならない。

立ち止まったままではいられないんだ。



踏ん切りをつけるために、俺達の『死』を見せつけることも、

あるいは必要なのかもしれない。