秋の夜は長い。
夜が明けるまで、まだまだ時間がかかる。
それはあたかも、これから戦に臨み果てていく俺達に、
自身の生きてきた道を振り返るために与えられた時間のように思えた。
――――あれから、もう六年も経ったんだな。
「あ〜あ!腹減ったなあ!やっぱり握り飯ひとつじゃ足りんよなあ!」
そう声をあげたのは、野村 駒四郎どの。
彼は向かいの松の根元に腰掛けて、あの時俺をチビと笑った、六年前と変わらぬ笑顔を見せている。
野村どのは、俺のひとつ年上の十七歳。
彼はどうも思ったことがすぐ口に出てしまう質で、俺をチビと言ったのも悪意があった訳ではないと後で知った。
ただ やはり背が伸びるまでは、何度か野村どのにその言葉を言われ、その度に雄治は犬のように食ってかかり、野村どのとじゃれているようだった。
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