幼い子供のように泣きじゃくる母さまをさすってあげながら、感謝の気持ちを込めてまつを見上げた。
まつも安堵して、落ちていた鞘を拾いあげ懐剣を納めると、頬を緩めて母さまと私を優しい眼差しで見つめた。
「ごめんなさいね……ゆき!母を許して……!!」
泣きながら謝ってくれる母さまをさすり続けながら優しく声をかける。
「もう いいのです。母さま……だからもう泣かないで下さい」
まつはそんな私達の前に膝をつくと、励ますように言った。
「さあ!ぐずぐずしてはおられませんよ!すぐに支度をして下さいませ!
お城を出立するお殿さまと八十治さまをお見送りいたしましたら、私達もすぐに参りましょう!」
私と母さまは不思議そうにまつを見る。
「行く……って、どこへ?」
不安な表情を見せる私達を安心させるようにまつは微笑んだ。
「警鐘が鳴ってからお城へ向かうのは、ゆきさまの足ではとてもご無理でしょう。
それよりも今日のうちに私どもの家に避難して下さい」
まつは私達の目を見つめて頷いてくる。
私と母さまも涙を拭って強く頷き返した。
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