新たな決意を胸に、屋敷の中に戻る。


ともかく私も母さまと一緒に、警鐘が鳴ったらお城へ入ることにしよう。


そうと決めたら、母さまに申し上げて、いつでも出れるよう準備をしなくては。



―――家の中はガランとしていて、ひどく 淋しい。



兄さまが福良へ出かけた時も感じたけれど、それでも今ほどじゃなかった。


母さまのお姿を探して、静寂とした家の中を歩きまわる。


奥にある母さまのお部屋で、こちらに背を向けたまま座っている母さまのお姿を見つけた。


その背中が小さく見える。


きっと今まで泣いておられたんだわ。


そう思うとせつない。


小さくなった母さまの背中に向けて、声をかけた。



「……母さま。兄さまはもうお城に向かわれましたよ」



私の声に、その背中がゆらりと揺れる。



「……そう。ゆき。お前もここに座りなさい」

「……はい……?」



振り向かずに言われて、私は言われるままに座った。