利勝さまは意外にも、微笑を(たた)えたまま強く頷いてくださった。



「わかった。約束する。
たとえ どんな姿になろうとも、必ずゆきに会いにいく」


「……!! ……本当ですよ?必ず会いにきてくださいね?」


「ああ。八十も連れてくよ。
だからお前はどんなことがあっても、この混乱の世を生き抜いて、俺の願いを叶えてくれ。
お前なら、きっと大丈夫だから」



利勝さまは笑う。
とてもとても、自信に満ちたお顔で。



それが私の望む形では成し得ない約束だと、痛いほどわかった。



だって、こんな利勝さま、変だもの。


こんな私のわがままに頷いてくださるなんて。

こんなに笑顔を絶やさずにいてくれるなんて。



「………もう 行くよ。八十が待ってる」



そうつぶやくと、手を差し出してくる。

黙って、その手に自分の手を重ねた。



ギュッと握ってくれる。大好きな 温かい手。



私はもう片方の手を利勝さまの手の下に添えて、その愛しい手を両手で包み込んだ。



そして、祈る。



――――どうか。

どうかこの温もりを 奪ってしまわないで。





「―――ありがとう。ゆき」



満足そうに笑うそのお顔。



何か言いたいのに、言葉が出てこない。



代わりにその笑顔を深く深く、胸の奥に刻む。



最も愛しい その笑顔を。