非常召集の回章文(まわしぶみ)が兄さまの元に届いたのは、八月二十二日の朝でした。


いつもの穏やかな朝食は、玄関から聞こえた声に破られた。



「おはようございます!八十治、とうとう来たぞ!非常呼集だ!!」



――――ドクッ!

私の心臓が、跳ねる。



「俊彦だ」



朝食をとっておられた兄さまが、箸を置いて席を立つと早足で玄関へ向かう。

私と母さまも箸を置き、急ぎ立ち上がる。



玄関へ向かうと、やはり俊彦さまがいらしていて、私達に気づくと頭を下げた。



兄さまは受け取った回章文に、真剣な表情で目を通している。

その口から呻くような、驚きの声が漏れた。



「……母成峠が破られた!? 土方さま達が負けたってのか……!?」



兄さまの回章文を持つ手に、力が込められる。



「兄さま……!」



不安になる私の声に振り返ると、兄さまは母さまに目を向けた。

その表情は、今まで見たことがないほど真剣で厳しいものだった。