この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜




 空を見上げる。



 初夏の空は陽も長く、午後もだいぶ過ぎたというのに夕暮れにはまだ遠い。



 青々と広がる空に、綿菓子のような入道雲。



 足を止めて、しばらくその様子を眺めた。






 ………いつも 空を見上げると、



 自分は、こんなにちっぽけなんだと、思い知らされる。



 そんな私にできること。



 兄さまに心配かけないよう、いつも笑っていること。



 そして、利勝さまが無事 本懐を遂げられるよう祈ること。



 利勝さまの決意の前に、私のこんな気持ちなど、邪魔なものでしかないから。





 ふと、まつの言葉を思い出す。



 男の人は忠義で生きていると。

 だから、心の赴くままに恋をしてしまうのが怖いのだと。



 それは 一度固めた決心を、揺さぶってしまうものだから。



 ならば私も、その心を消してしまおう。



 利勝さまが、ご自分の願いを叶えられるように。