いきなりパァン!と乾いた銃声が聞こえてきて、驚いた私は首をすくめて耳を塞ぐ。



 「……あ。びっくりした。砲術訓練が始まったのね」



 さき子さまも胸を撫で下ろしておっしゃる。
 そのあとも続けざまに激しい銃声が響き渡った。




 ………こんな すごい音。



 利勝さまと兄さまは、毎日のように間近で聞いているの?



 やっぱり不安な表情が顔に出てしまう私を気遣かってか、さき子さまは私の肩を押して歩くよう促した。



 「さあ!桜も見たことだし、もう帰りましょう。
 あまり遅くなると、母上に叱られてしまうわ!」



 私は力無く、押されるままに歩き出す。



 そんな私の目の前を、ふわりと桜の花びらが舞った。





 ――――桜。



 桜の木は 武士の象徴。武士の憧れ。



 咲く時は 鮮やかに。散り際は いさぎよく。



 きっと兄さま達も、そうありたいと願ってる。



 私はそれを、喜んで見送らなくてはならないんだ。





 満開の桜を見つめながら、私は 利勝さまと兄さまのよく似た背中を思い出していた………。