母さまは励ますように、私の手をぽんとやさしく叩く。



 「はい……」



 母さまのその言葉は、お父上さまや兄さま達の出陣が、そう遠いことではないと示している。



 だからこそつらい。



 私だって本当は、兄さまの喜びを一緒に喜びたい。

 いつだって、希望に満ちた兄さまの笑顔を見ていたい。

 応援したいし、私が兄さまの一番の理解者でありたい。



 きっと雄介さまのことがなかったら、私も手放しで喜んでいたはずなのに。



 今は、どうかその時なんて来ないで と、切に願っている。



 こんな私が、兄さまの、利勝さまの出陣を、

 笑って送り出すことができるのだろうか……?