八十治兄さまは、私の面倒をよく見て下さいました。
 継母の手前、そうせざるを得なかったのかもしれません。


 私は生来 左足が悪く、走ることが苦手で、歩く時はいつも足を引きずっておりました。


 そのためか、人目に立つのを怖れて部屋から出たがらない私を、兄さまも気を遣って下さったのでしょう。


 足を引きずる 変な歩き方。何をするにもモタモタする私に、兄さまは叱りもせず、馬鹿にもせず、つねに優しく接して下さいました。



 ………こんな自分に良くしてくれるのが、とても嬉しくて。
 私はすぐ、兄さまを慕うようになりました。



 「兄さま 兄さま」と、悪い足でピョコピョコ歩きながらも、毎日 兄さまの後を追いかけてばかり。



 兄さまはきっと、たいそうご迷惑だったでしょうね?



 でも こんな足だからと卑屈になり、あまり外に出たがらない私に、友達がいないことを知っていたからでしょうか。

 兄さまは苦笑いしつつも、私の相手をよくして下さったのでした。