京の政治情勢が急速に変わっていくなか、それでも遠く離れたここ会津で、私達は変わらない日々を過ごしておりました。



 季節は変わり、夏。



 毎日うだるような暑さに、私は暑気あたりになった。


 蝉の鳴き声にも、気力を奪われそう……。


 体調がすぐれなくて、外に出れない私を気遣かってか、その日は昼前からさき子さまが訪ねてきてくださった。



 「……来てくださって、ありがとうございます。なかなか調子が戻らなくて……。
 けれど今日は、だいぶ塩梅(あんばい)が良いんですよ」



 襖や障子、戸という戸をすべて取り外し、風の通り道を作って日陰になった座敷に座り、さき子さまと私は向かい合って冷茶をすする。



 「無理もないわ。今年は猛暑だもの」



 さき子さまは笑った。



 相変わらず蝉の声がうるさいけれど、時折吹き抜ける風が、縁側に下げた風鈴をチリリと心地よく鳴らしてゆく。


 それだけで胸に清涼感が広がる。


 ここから眺める庭は夏の強い陽射しに当てられて、日陰なった座敷からはその景色がやたら眩しく見えた。