するとおふたりは、お寺の前を通り過ぎたところでなぜか道をそれた。

 ふっと 提灯の明かりが消えたから、私はあわてて後を追う。



 (えっ……?どうして?帰り道はまっすぐでしょう?)



 おふたりが歩いていくのは、うっかりしてると見落としてしまいそうな細い小路。

 境内からはみ出す竹林が陰を作り、月明かりもそこには届かない。


 闇に吸い込まれるように遠ざかる提灯の明かりに、ついていくのをついためらってしまい、小路に入れず足踏みしていると、

 また提灯の明かりが近づいてきて、兄さまが私のところまで引き返してくださった。



 暗闇が怖くて、兄さまを不安に見上げる。



 けど明かりに照らされた兄さまのお顔は、私を安心させるかのように優しく微笑んでいて。


 兄さまは無言で私の手を取ると、怖がる私を闇の中へと導いてゆく。


 おずおずと少し足場の悪い道を、兄さまに手を引かれながら歩いてゆくと。


 暗がりの中で、利勝さまが私達を待っていて下さった。