私は自嘲した。



 「……私にはきっと無理です。こんな足だし、食事の仕度やお針の腕もまだまだですし。嫁仕事も満足にこなせませんよ。こんな私なんか、誰もお嫁にもらってくれません」



 投げやりにも取れる、そんな拗ねた言葉を落としてみる。

 兄さまは書物に視線を落としたまま。
 和綴じの書物の頁をめくる、和紙の擦れる音だけが小さく響く。


 ふっと待ち望んでいた風が吹き抜け、その風にのって、兄さまの声が聞こえた。



 「……なら。嫁にいかず、ずっとここにいればいい」



 驚いて目を向けると、いつのまにか書物から私に視線を向けていた兄さまと目が合った。


 兄さまの目は笑ってなくて。
 ただまっすぐ 私を見つめる。