恋をすることが 怖い……?


 そんなこと、考えもつかなかった。


 だって私にとってのそれは、まだ甘く温かなものでしかないから。


 兄さまにとっての恋は、怖いものなのだろうか?
 兄さまは「邪魔なもの」と おっしゃっていたけれど。



 「私は、恋をしたほうがいいと思いますよ」



 まつはすっかり以前のまつに戻って、私に笑いかけ 励ましてくれる。



 「恋は、人の心をより大きく成長させるのです。
 より心を豊かにしてくれるのです。
 たとえ相手が想いを返してくれなくとも、叶わない恋でも。してよかったと思える恋を、ゆきさまもしてください」

 「ありがとう……まつ」



 うれしかった。

 この恋を応援してくれるまつの笑顔が、とてもうれしかった。

 うれしくて、ホッと心が緩んで。
 私の目からまた 涙が落ちた。



 ―――そうね。きっとまつは幸せになれるわね。


 こんな素敵なまつを、嫁ぐ相手が受け入れないはずがない。

 だって私の 自慢の姉上だもの。