ふっと初夏の風が流れてきて、私もまつと同じように空を見上げる。
つきぬけるような青空は どこまでも高くて。
こんな暗く小さな部屋にこもった、ちっぽけな私を余計に孤独にさせる………。
「……男の方というのは」
静かな、まつの声が聞こえた。
「ましてやお武家さまというのは、とても大変ですね」
「え……?」
意味がわからず、まつを見つめる。
まつも私を見つめ返して、ふふっと笑った。
「女子は感情のまま生きてゆけるのです。
たしかにつらいことも、女子ゆえの理不尽さもあります。
けれど心は、男の方より自由だと、私は思うのです」
「……?」
首をひねる私に、まつは歌うように続けた。
「男の方は『忠義』のために生きておられるでしょう?
主君に対する忠義。お国に対する忠義。父母に対する忠義。
その忠義心の前には、どんな私情をも捨てなければならないのです。
……ですから心の赴くままに、溢れる感情のままに。恋をしてしまうことが、きっと怖いのでしょう」
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