「……まつは強いのね。私はきっとダメだわ。
今の恋が叶わないのならと、次の恋を見つける勇気なんて、私にはきっとない……」
目を伏せると また涙が落ちる。
「大丈夫。女子はみな 強いんです」
涙で汚れた私の顔を、まつが自分の手拭いで拭いてくれた。
「この前とあべこべですね」
そう笑って。
そうして 涙を拭き終えるとそっと尋ねてくる。
「……ゆきさまも、恋をされておられるのですか?」
まつの優しさに触れて、私は問われるまま素直に答えた。
「……うん」
「お相手は、永瀬さまですね」
「えっっ!?」
どうしてわかるの!? と、驚いてまつを見るけれど。
まつはふふっと笑うだけ。
「……そうですか。ゆきさまも恋を……」
まつは嬉しそうに笑う。
「……けれど兄さまは『恋など不要だ』なんておっしゃるの。
けして叶わないものだから、絶対 口にしてはダメだって。
たとえ想いを告げたとしても、相手が困るだけだから。―――そうおっしゃって」
「まあ……」
まつは目を丸くすると、開け放たれた障子のあいだから見える青空を見上げた。
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