そっとまつの手が伸びて、私の肩をさすってくれる。
「……お顔を上げてください。もうよいのです。
私は、私の幸せを願ってくださるあの方のお心が、とても嬉しいのです。
だから、あの方が心配なさるといけないから、私は幸せになろうと思います」
私は涙の溢れたぐちゃぐちゃな顔を上げて、まつを見る。
まつは以前のように、優しく笑ってくれた。
「……それは兄さまのため?」
「いいえ、自分のためです。ゆきさま。私はね?私はもう一度、恋をしようと思うのです。今度は私が嫁ぐお方に」
「もう一度、恋を……?」
「ええ、そうです」
そう言って笑うまつは、ふっ切れたような輝いた笑顔を見せた。
私はその中に、まつの強さを見た気がした。
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