『たとえお前が想いを告げようとも、相手は困るだけだ』
……ぼんやりと、兄さまの言葉を思い出す。
空は今日も青い。そして暑い。
あれから何日か過ぎて床からは出たものの、そのあとも私は何をするでもなく部屋にこもり、ただ呆けた日々を過ごしていた。
母さまには叱られた。
「歩けないわけではないのだから、少しは働きなさい」と。
けれど私に甘い母さまが、あまり強く叱らないのをいいことに、「足が痛むのです」 と押し通していた。
―――こんな足。
うまく動かない上に、自分が無茶ばかりするから傷だらけ。
今回の傷だって、痕が残るだろうと、お医者さまにも言われた。
(誰だって嫌よね。こんな私に想いを告げられたら)
たとえお父上さまが決めてきたお方に嫁いだって、こんな足では嫁仕事も満足にいかないわ。
「……想いを告げたりなんかしないわ……。嫁にだって行かない……」
いくらか拗ねた口ぶりで、私はひとりつぶやいた。
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