兄さまが心配してくれるのは ありがたいけれど。

 まつのことを思うと、チクリと胸が痛む。

 兄さまが私を心配してくれるたび、まつから兄さまを奪っているようで。



 「……兄さま」

 「ん?どうした」



 本当のことはとても言えないけど、

 遠回しにお願いしてみれば……。





 「兄さま。まつの縁談、なかったことにできないでしょうか……?」



 兄さまは目を見開く。

 そしてその目が、険しく私を見据える。



 「……いきなり何を言う?父上がお世話なさったことだ。父上がお決めになられたんだ。お前がどうこう言うことじゃない」

 「それは十分わかってます!けれどまつが可哀相です……!」



 ―――しまった!



 うっかり口をついて出てしまい、反射的に口元を手で塞ぐ。

 けれど すでに遅かった。



 「……まつが!?」



 兄さまの目が、ことさら鋭くなった。



 「どういうことだ……!? まつがお前に婚儀を取りやめてほしいと、そう頼んだのか!?」



 私はあわてて身体を起こす。



 「そうではありません!私が勝手にそう望んでいるだけです!」

 「お前が……!?」



 ああもう、遠回しに頼んでみるつもりだったのに!私ったら、なんて馬鹿!!


 兄さまは驚きを抑えつつ、険しいお顔のまま、きつくおっしゃった。