幸い熱は一晩でひいたけど、私は大事をとって翌日も床に臥していた。


開け放たれた障子のあいだからは、青空が見える。


外は今日もいい天気。おまけに暑い。


何となく、ご友人がたと外で元気に駆け回る利勝さまのお姿を想像して、
心の中がふわりとした甘さで満たされてゆく。


以前、利勝さまが連れてきたお日さまと草の匂いを思い出した。



この青空の下、私も一緒に、駆け回ることができたら。



それができたなら、どんなに幸せだろう。



けれど現実に目を戻すと、私の足はとても無残。



………ため息が落ちた。





ふと静かに、誰かが部屋に近づく足音に視線を向ける。



「……起きてたか。具合はどうだ?」



そうおっしゃって、お顔を覗かせたのは兄さまだった。



「兄さま……?今日はお早いお戻りですね」



私が身体を起こそうとすると、兄さまはそれを押しとどめて、



「いい。足が痛むだろう。そのままでいろ」



そうおっしゃって、横になっている私の脇に腰を下ろすとあぐらをかいた。



そしてふわりと私の額に、兄さまの手が降りてくる。



「熱は下がったようだな」



つぶやくと、安心したように柔らかく笑う。