そのあとも私は、利勝さまとぽつりぽつりお話をした。

 すでに掟を破ってしまっているからか、利勝さまもすらすらと滑らかにお答えしてくれる。

 その中で利勝さまは、あの場に居合わせた経緯も語って下さった。



 「この先に砲術遠丁打場があってな。その一角に射撃場も設けてあるんだ。
 山本さまは京へご上洛されていてご不在だが、その妹のお八重どのも、これまた銃の扱いが巧みでな。
 さっき一緒だった悌次郎、あれの住まいが山本さまの隣家なんだ。
 だからその伝手(つて)で、お八重どのに実弾の撃ち方をご教授願いに行ってたという訳さ」

 「さようでしたか……」



 そしてその帰り道に、私と鉢合わせしたのね。



 「利勝さまは本当に、砲術に関心が深いのですね」

 「ああ。剣術・槍術ももちろん大事だが、いずれ必ず砲術は重要になってくる!俺は銃丸の製法なども学びたいんだ!」



 その声は力強く、生き生きとしていて。

 きっと今 利勝さまは、とてもいいお顔をなされているんじゃないかと思った。

 そしてそのお顔を見てみたいと思った。



 利勝さまは以前おっしゃっていたように、ご自分が出来ることを精進なされているのですね………。







 わが家にはあっという間に着いた。


 しょせん、私の足だもの。走ったといっても、たいした距離にはならなかったのだろう。

 それとも甘く温かな時間だったから、過ぎるのが早く感じたのか。



 利勝さまは門をくぐると、裏の勝手口のほうへと私を運んでくれる。
 そのお顔も首筋も、じんわり汗で濡れていた。

 暑いなか、私とご自分の荷物を抱えておられたんだもの。
 きっとお疲れになられたはず。



 「ごめんください!」



 裏口の戸が開いていたので、そこから利勝さまが声をかけると、土間にまつ、板間には母さまがいて、夕飯の仕度をしているところだった。


 利勝さまの背中から板間へと下りる私を見て、母さまが驚いて駆け寄ってくる。



 「ゆき?お前いったい、どこへ行ってたの?
 それにその傷!いったいどうしたの!」



 足のケガを認めて、母さまが青ざめた。



 「母さま……」



 うまい言い訳が思い浮かばない。
 なんだか頭がふわふわしてて。


 なんて言おうか言葉を探していると、