帰り道を黙々と歩くなか。
全身に利勝さまの熱を感じながら、その背中に背負われて、私は動けずに硬直していた。
少しでも動けば、利勝さまの負担になりそうで。
だって利勝さまは、私のほかにご自分のお荷物まで抱えているのだから。
………耳元で胸の音が響く。顔が熱い。
何か話しかけようかと思うけど、何を話していいのかわからない。
わからないまま、ただひたすら利勝さまのうなじを見つめる。
そんななか、利勝さまがおもむろに空を見上げてつぶやいた。
「……あっという間に、空が真っ赤になったな」
利勝さまのその言葉に、私はそっと首をめぐらせる。
山々に囲まれた会津盆地の空は、そのほとんどを赤く染めていた。
「……きれいな夕焼けですね」
「そうだな。俺はこの時期の夕焼けが一等好きなんだ」
――――ドクッと心臓が跳ねる。
『好き』。
その言葉が、とても清らかなものに思えた。
そして 自分の心の中にも、それと同じものが芽吹いていることに気づく。
――――空に浮かぶ綿のような雲も、
旺盛に繁る樹木を胸に抱いた山々も。
風になびく、きちんと並んだ稲達も。
そのすべてが赤く、夕日に照らされていて。
……きっと 顔が赤くたって 気づかれない……。
だから、そっとつぶやいた。
「……私も。私も 好きになりました……」
利勝さま。あなたのことを………。
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