この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜




 利勝さまは立ち上がった私をじろじろと眺めまわすと、転んで所どころに付着した土を(多少乱暴に)払い始める。

 左の脛についた土も、かがみ込んで同じように払ってくださった。



 「あ……ありがとうございます」



 なんか変。利勝さまに触れられている部分が、なんだか熱く感じる。

 感覚のない冷たい左足でさえも、ぽかぽかと温かくなるみたい。

 そしてそれに反応するかのように、胸の鼓動はどんどん早くなる。

 まるで熱に浮かされたように、身体がおかしくなってしまいそう。



 払い終えて立ち上がると、利勝さまは私の足元を見て再度ため息を落とした。



 「裸足の上に、利き足がこれではな……。くそ、仕方ないか」



 そうつぶやくと、私にくるりと背を向けた。



 「おぶされ」

 「えぇっっ!!?」



 膝を折り、かがんで背を向けた状態でそう言われ、私の心臓は跳びはねた。



 「仕方ないだろう!? お前が痛めたのは利き足だし、どうせ俺の草履を貸しても歩きづらいだけだろ!? こうするのが一番いいんだよ!!」

 「……!!」



 夕焼けが迫ってきているせいかしら?

 利勝さまのお顔が赤く見える。



 そして私も。顔が熱い……。



 「いいから!早くおぶされよっ!!」

 「はっ、はい!!」



 だんだん機嫌が悪くなりそうなので、はしたない……と思いつつ、お言葉に甘えて利勝さまの背に身体を預けた。



 「よし。行くぞ」



 私はコクンと頷く。

 利勝さまはぐんと立ち上がり、まるで私なんか背負ってないみたいに、普通に歩いてゆく。



 「だ……大丈夫ですか?」

 「馬鹿にするなよ!? これでも毎日、武道の稽古で鍛えてるんだからな!
 お前みたいなチビのひょろすけ背負うぐらい、訳無いんだよ!」



 驚きつつ 私が尋ねると、利勝さまのそんな不機嫌な声が返ってくる。



 ………すごい。



 いつのまに、こんなにたくましくなられたのですか?

 こんな、私を軽々と背負われるなんて。


 私を受け止められるくらいに成長した背中。

 触れる部分から、利勝さまの熱が伝わってくる。



 ………熱い。



 利勝さま、大丈夫かしら?

 重くないかしら?疲れないかしら?



 ああ、それより。



 この胸の鼓動の早さが、
 利勝さまに気づかれませんように………。