とにかく顔についていた涙や汚れを拭い取ると、「よし」と、利勝さまが頷く。
そうして さっきと同じように、立ち上がって手を差し延べてくれた。
「立てるか?」
少しためらったけど、手を伸ばして利勝さまの手を掴む。
するとその手は、思わぬ力で私を引っ張りあげ、私の身体を 難無く立ち上がらせてくれた。
「……!」
利勝さま。
たしかに私よりは、背も身体も大きい。
それでも、兄さまより背は低いはずなのに。
お身体だって、先程の悌次郎さまみたいに大きくは見えないのに。
力強い。
男の方って、すごい。
知らなかった驚きで、私は利勝さまの手を掴んだままだということも忘れていた。
「……おい。離せよ」
不機嫌な声で言われて、あわてて手を離す。
温かかくて、少し汗ばんだ、利勝さまの手。
………もっと、つないでいたかったな。
ふとそんな思いが頭に浮かんで、私はものすごく恥ずかしくなった。
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