この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜




 「まつ!やめて!頭を下げたりしないで!! 」



 まつに駆け寄り、顔を上げさせる。
 まつの顔は、また涙でぐちゃぐちゃだった。

 兄さまが恋しくて、そばにいたくて。
 でも叶わないから苦しくて。
 農民に生まれ落ちた、自身の身分がくやしくて。

 抑えようとしても沸き上がるどうにもできない恋慕と悲しみに、まつは傷ついて泣いていた。



 「まつは何も悪いことはしてないわ!想うだけなら、罪にはならないでしょう?」



 ―――確かにまつの恋は苦しい。

 まつの恋は身分違いの恋。けして成就しない恋。
 だからといって消してしまえるような、簡単なものでもない恋。

 それはきっと、幼い頃の約束の中に、まつがそっと隠した想い。


 ………誰が咎めることができるだろう………。



 「私、誰にも言わないから。だから心配いらないわ?」

 「……ゆきさま……」



 まつの顔が、少し安心したように緩む。


 ………応援してあげたい。

 けして叶わぬ恋だけど。

 せめて、兄さまのそばにいられるように。