「蓬団子か、うまそうだな。まつもここで一緒に食べよう」
兄さまの提案に、私も両手を叩いて賛成した。
でもまつはあわてて首を横に振る。
「とんでもございません!私は仕事が残っておりますので……!」
「そう申すな。小さい頃はよく一緒に遊んだり食べたりしたじゃないか。
たくさんあるんだし、まつも食べていけよ。継母上もきっと、こうなることはご承知済みのはずだ」
兄さまに優しく言われて、浮きかけたまつの腰はためらいがちに下りる。
「……では、少しだけ」
小さくため息を落として、まつは微笑んだ。
困った弟妹に折れた姉。
私にとってまつは、たとえ身分は低くとも、本当にいい姉上なのだ。
盆の上には湯呑みがふたつ。
「まつの分のお茶がないわね。私、淹れてくる」
「ゆきさま!私はけっこうですから……!」
「いいから、いいから」
止めるまつの言葉も聞かず、私は上機嫌でお茶を淹れに台所へ向かった。
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