なぜだか心の中の淋しさは、いつのまにか消えていて。
 じんわりと温かくなる心に添うように、私は頬を緩めた。



 「……そのお心。素晴らしいと思います。
 お国のために、お殿さまのために。
 力を奮えるよう、精進して下さいましね?」



 まさか私にそう励まされると思っていなかった利勝さまは、驚いて目を丸くして私を見つめた。

 ついにこにこと、私は笑みを返してしまう。

 それにつられたのか、利勝さまも私に向けて、少しだけ口角を上げた。



 「……おう」



 強く頷くその微笑に、私の頬は勢いよく熱をおびる。



 (―――ああ。なんでだろう?うれしさがとまらない)



 支度を済ませて玄関から姿を現した雄介さまに気づいて、「そ、それでは」と、私はあわててお辞儀をして門をくぐる。


 ぴょこぴょこ足を引きずりながら、急いで永瀬邸を後にした。