「……姉上が」

 「えっ?」



 声なんかかけてもらえると思ってなかった私は、思わず過剰に反応してしまう。

 それを見て 軽く驚くも、利勝さまはまたいつもの不機嫌な表情に戻り、



 「姉上がお前に、俺のことをどう言ってるのかは知らないが。
 いま会津は過激な攘夷派から京の都を守らんがため、君臣一体となって戦っている。
 俺はまだ微弱だが、国のために今 自分ができることを精一杯やりたいんだ」



 ドキッと、した。



 まさか利勝さまが、私にそんなことを聞かせて下さるなんて。
 私に、ご自身の心の内を、明かしてくれるなんて。

 先程の、兄上さまに無理やりお願いしたお姿を、私に見られたのが恥ずかしかったからですか?

 それで理由を話してくれたのですか?


 驚いて何も言えないでいると、利勝さまはため息を落とし、



 「……こんな話、お前みたいなガキには、わからんと思うけどな」



 話しても無駄だったと言うように、視線をそらせて口を尖らす。


 けれど、不思議とその態度に腹は立たなかった。