兄上さまはさき子さまの後ろで覗いていた私を認めて、「おや」と、声を漏らす。

 目が合って、はしたない姿を見られて、恥ずかしくなった私は思わず俯いた。



 「さき子のお友達かい?」

 「そうよ、おゆきちゃんというの」



 四つん這いの姿から身体を起こして、窘められたことなど気にもとめないふうで、さき子さまは笑う。



 「は……初めてお目にかかります!ゆ、ゆきと申します!」



 緊張して声が震えてしまう。



 「ああ、さき子がいつもお世話になっていてすまないね。兄の雄介(ゆうすけ)です」



 そうにこやかに笑う雄介さまは、ぱっちりとした大きな目がそっくりなおふたりとは違い、涼やかな目元をしていた。

 きっと雄介さまは、お父上さまに似ておられるのだわ。

 だっておふたりは、お母上さまのくら子さまにそっくりですもの。