そのあと少ししてから、私もそろそろ帰ろうとしたとき。


 またまた玄関のほうから、利勝さまの元気なお声が聞こえてきた。

 しかも他にもうひとり、別の御仁の声もする。



 「おかえりなさい兄上!! 兄上!今日こそ俺も一緒に連れていって下さいね!?」


 「しかしなぁ……。お前の年では、まだ砲術は禁じられているんだ」


 「それはわかってます!だから兄上のそばで砲術の訓練を見させてもらうだけでいいんです!
 お願いだから兄上!俺も連れてって下さい!! 」



 そんなやりとりを響かせて、先ほどと同じ騒がしい足音と、落ち着いた足どりの静かな衣擦れの音が一緒に近づいてくる。



 「……まぁた、始まった……」



 さき子さまがため息を落とした。



 「あの子ったら……!用事があるなどと言って、門の前で兄上を待ち伏せしてたのね!」



 訳がわからず、首を傾げる私。するとさき子さまが教えてくれた。



 「あの子が兄上にとても懐いてるのは、先に話したでしょう?
 兄上が砲術に熱心だから、自然あの子も興味を持ってしまって。

 まだ早いと諭すのに、国のために学ぶのに早いも遅いもないと言い張ってきかないのよ。
 まったく頑固なんだから!!」



 と、吐き出す息も大きく、呆れた表情を見せる。