利勝さまはそのまま少し頬を赤くして、いつもの調子で声を荒らげる。



 「チビだからチビって言ったんだ!それに他人の家に来て居眠りするか?普通!?」

 「居眠りしていた訳ではありません!それにと……雄治さまだって、兄さまよりチビじゃないですかっ」



 ムッとあからさまに怒って、利勝さまは眉根を寄せる。



 「うるさい!チビにチビって言われたくないんだよ!」



 さらに声を荒らげるけど、私はびくともしない。



 「私だって、もう子供じゃないんですから。
 と……雄治さまに怒鳴られたって、怖くなんかありません」



 すまして顎をあげると、利勝さまもすかさず言い返してくる。



 「何言ってんだ。まだ十分、子供のくせに」

 「まあ!」

 「チビはだんだん姉上に似てきたぞ?
 そんなんじゃ、どこからも嫁の貰い手がないぞ」


 「まあ!!! 」



 声を発したのは、私でなくさき子さま。

 いつのまにか戻って来られたさき子さまが、開け放たれたままの障子のあいだに立っておられて、

 利勝さまとよく似たお顔を目一杯しかめていた。