『ぱられる☆』

 母親は帰って来たり、また、イギリスに行ってしまうことを繰り返すと言っていたが。
 無理をしなくても良いのに、と侑香は思った。

 引越してきた家は大きくはないし、かといって小さくもない。
 しかし、二人だけで棲むには大きすぎた。
 荷物であるたくさんのダンボール箱の中身は、生活必需品より父の本や資料ばかりである。父親がいらない物を家具と一緒に送ってきたに違いない。

 侑香はそんな憎らしい荷物を踏みつけ廊下に出た。
 「ほうあっ!! ととっ!?」
 ズボス、という音と同時に足がダンボール箱に埋まる。
 完全に中身の詰まっていないダンボール箱を踏んだのだ。足がもつれ、前のめりに転ぶ。周りの荷物を巻き込みながら。