「知ってるよ、私。
尚樹、プロから誘いが掛かってるの」
「…何で」
「周りでみんな騒いでたから。
『沙織、当然知ってるでしょ?』って言われた。
…知らないとは言えないから、『知ってる』って言っておいたけど」
「ごめん…っ、けど」
その後に続く言葉を、私は知っていた。
だって、周りの子たちが言ってたから。
『ねぇ、知ってた?』
『何?』
『松井君、あの有名なプロチームから誘いがかかったんだって!』
『え、そうなん?!』
『だけど、断りかけてたらしいよ!』
『え?!勿体無い!なんで?』
『彼女を置いては行きたくない、って言ったらしいよ』
その時、私は罪悪感が込み上げる。
―――私の所為だ。
私の所為で、尚樹は夢を手放そうとした。
それは、彼女として最低なんじゃないのかって思う。
きっと、尚樹はそんな風に思ってしたことじゃない。
それは、私のプライドが許さなかった。