「………あれ、どうしたの?」
背後から声が聞こえて、振り向く。
「芹沢君……」
「……もしかして、傘忘れた?」
私に微笑みかける芹沢君。
「あ、うん……」
「……はい」
目の前に黒い折りたたみ傘を差し出される。
「え?!」
「それ、もしよかったら結城と2人で使って?俺、置き傘と常に折りたたみ傘持ち歩いてるから二つあるんだ。」
え………芹沢君はほんとに……王子様ですか。
こんな……傘を貸して下さるなんて!!!
……って、こんなことしてちゃいけない。
「いや、良いよ!!」
「遠慮しないで。じゃ。」
芹沢君は無理やり私に傘を渡すと、風のように去っていった。
借りちゃった………