桜井はキツネにつままれたような顔であたしを見つめている。

あたしは彼女の胸ぐらを放し、ポツリポツリと話し始めた。

「あなたの言う通り、男と歩いていたわ。でもこれだけはわかって?あれはあたしの兄の友人でありあたしの友人であり恋人ではないわよ」

あたしは黒髪を風になびかせて言った。

「あたしもあなたに言いたいことがあるのよ」

「え、何ですか?」

「言いたいことっていうより聞きたいことかしらね」

あたしは髪をかきあげ、こう言った。




「あなた、倉田のこと好きでしょ」