「ごめんね碧ちゃん。本当に大丈夫だから。」

そう言った白糸くんは本当に笑っていたから…

「…よかった、」

なんか安心して笑えてきちゃった。

「それにしてもびっくり。白糸くんが話しかけてくれると思わなかったから。」

なんとか話を続けたくて話題を振ってみた。

「え?なんで?」

うそ…白糸くん…。本当に分かってない様子…

自分がモテるって自覚ないのかな?

「だって、学校の王子様なんでしょ?
私なんかに話しかけてくれるとは思わなかったなー」

そう、わたし“なんか”に話しかけてくれるとは思わなかった。

たしかに空手は得意だけど、特別かわいいってわけでも、スタイルがいいってわけでもない。

ふつうの女子高生。

それなのに、王子様が話しかけてくださるなんてありがたや~。



ん?

そう言えば…

「前から(というか、ついさっきだけど)気になってたんだけど、なんでみんな王子様っていうんだろうね。」

そりゃ、きれいな顔してると思ったけどさ。

「白糸くんには、白糸 翔って名前があるんだから、普通にそう呼べばいいのに。
王子様なんて、呼びにくくないのかな?」

そう思わない?

そう言って白糸くんを覗き込む。

「“王子様”なんてあだ名聞いちゃったからなんかすっごい人かと思ったけど、白糸くんって以外とふつうだよね。」

ふつうに笑うし、ふつうに話しかけてくれる。

なんか、もっと遠くの人っていうか本当に王子様だと思ってたからかな?

なんか、ちょっと近くに感じる。


それに…


あんな顔もする。


さっきの傷ついた白糸くんの顔。

私があんな顔させたんだ。

白糸くんは笑ってくれたけど…

やっぱり、気にするよ…。

もし、傷ついた理由が黒髪の人なら、黒髪の人はは白糸くんにとって大切な人なんだよね?

じゃなきゃ、あんな顔しないよね?

じゃぁ、なんで今朝あんな風になってたんだろう?

考えでも答えがでない謎を悶々と考えていると

ふわりと何かが触れた。

その何かを確かめようと上を見ると…。