『……大胆な事したな、あたし』
一方抱き着いたまりあは、意外と冷静に事態を受け入れていた。
瑛が、神無あたりに唆されて自分を迎えに来たのだろう事も。
『……この先輩が、自分から追ってくる訳が無いもんね』
分かってしまう自分が悲しいが、そんな瑛を好きになったのは自分だ。
そして――それなら、貴重な二人きりの今に甘えておこうと思ったのも、自分。
『今なら、頭が混乱してたんですって言えば大丈夫だろうしね』
無意識のうちに言い訳まで考えている自分に苦笑しながら、瑛に抱き着く腕に一瞬だけ力を込める。
そのまま、体を離そうとして――
「……お前は、なんでいきなり駆け出したんだ」
不意に耳元で響いた低い声と、強い力で抱きすくめられた驚きに、まりあは固まり――胸が、ときめくのを感じた。

