「・・・・ソレ、シュークリームですか?? そのお店、この前雑誌に載ってましたよね?? やっぱおいしいんですか??」
広瀬が立川が持っていたお見舞い品に視線を落とした。
「1コ食べますか?? たくさんあるので」
立川がシュークリームを1つ取り出す。
「・・・・ダメなんですよー。 病院の決まりで食べ物をもらうことが出来ないんですよー」
よほど食べたいのだろう。
広瀬は目を潤ませながらシュークリームを見つめた。
「バレませんよ。 誰にも言いませんから」
端正な顔立ちの立川は綺麗な笑顔を作って、シュークリームを広瀬の手の上に乗せた。
「・・・・やったー」
広瀬がホクホクの笑顔になった直後
「広瀬さんッッ!! 『やったー』じゃないでしょ。 お返ししてさっさとシゴトに戻りなさい」
どこからともなく別な看護師が登場した。
「・・・・・すいません。 すぐ戻ります」
残念極まりない表情を浮かべながら、広瀬は立川にシュークリームを返した。
・・・・・と思ったが
その看護師が広瀬に背を向けた瞬間だった。
広瀬は立川の手に持たれていたシュークリームを、ダイソンも驚くようなバキューム力で一気に吸い込み、飲み込んだ。
「すぐ飲み込んだら味分かんないでしょ」
立川が肩を震わせて笑う。
「ワタシ、のどでも味覚感じれるんでッッ!! 噂通り超絶おいしい。 きっと上司の方も喜びますよ!! じゃあ、ワタシはシゴトに戻ります。 ありがとうございましたッッ!!」
広瀬はさっきの看護師を追いかける様に、早足でその場を去って行った。



