夢人は、そばにいた女性に、突如泣き出した叶美は知り合いだと伝えた。
女性は戸惑った表情をしていたが、そのまま何度か謝礼をして立ち去る。
その様子を見て、叶美は不思議そうに瞬きを繰り返していた。
叶美は先程の女性に、夢人を取られたのだと勘違いしたのだった。
「叶美……」
「あ、」
「とりあえず泣きやんでくれよ」
夢人の言葉に、叶美は慌てて涙を拭う。
「……」
「ユメ君、今の人は」
「叶美、話すから、来て」
いくらか優しい声音で、夢人は子どもを宥めるように叶美に言い聞かせた。
それから叶美は大人しく、夢人の手のひらを握った。
「ユメ君、さっきの人、彼女さん?」
「違うよ」
「……そう、違うの」
急かすように叶美が聞くので、夢人はまず先程の女性が恋人ではないことを告げる。
夢人は、「誰か」のものではない。
その事実に、咄嗟に叶美はこれまでのように逃げ出そうとした。
夢人はそれを制し、そのままアパートまで歩き続ける。

