「叶美、ちょっと聞いて」
「……何?」
「俺、綾香と別れようと思う」
暫く二股をかけ続けて過ごした末、夢人はようやく綾香との関係を断ち切ることを決心した。
しかしそれは夢人の、綾香に対する後ろめたさからであり、叶美と一緒になりたい思いが先走りしているわけではない。
夢人は、解っていた。
「そう」
「……」
「それじゃあ、私とユメ君との関係も、もう終わりね」
叶美はきっとそう言うのだろうと、夢人は心のどこかで感じていた。
叶美は基本的に物欲というものがない。
ない、と判断するのは、叶美の心底を誰も暴くことができていないので、不適切かもしれない。
きっと、自発的に欲しいものが生じることがないのだろう。
しかし、そこで何らかの経緯により生じたそれを、「欲しい」と表に表さない理由があるのだろう。

