背徳性理論

 

その休み明け、夢人は悶々と出勤した。
夢人の脳内を、綾香に対する後ろめたさが半分と、叶美といることで生じる焦がれるような気持ちの半分とで占められていることが、悩みの種だった。

最初は綾香に対して至極申し訳ない気持ちになる。しかし、そのうち叶美のことを思い出すと、叶美と一緒にいたいと思う方が強くなる。

叶美は何を考えているか解らない女だった。表情を極端に表に出さず、よく観察しなければ、喜んでいるのか怒っているのか解らない。

夢人は平日、綾香が部屋へ来ていないことを確認してから叶美を呼んだ。叶美は綾香の存在を知っているので、もちろん立場や状況を弁えている。

休日の前日には、綾香は特別に用がない限り部屋へ来ていたので、なかなか初めて話した夜以来、叶美を部屋に泊めることはなかった。


「ユメ君、ご飯何作る?」


叶美は夢人を「ユメ君」と呼ぶ。
夢人にはそれが、更に叶美を可愛らしくしているような気がしてならない。